ワーママのアメリカと日本の子育て

弁護士の子育てサバイバル日記

学期の始まり

ハーバードの授業は概ね9月から始まるが、最初は履修登録手続きやら何やらで、ざわざわざわざわ落ち着かない。

 

私が通っているロースクールの履修登録は複雑怪奇で、①履修したい科目を履修できない、②履修登録手続きが4段階もあり、履修できないと諦めたらなんちゃって履習できたりする、③変更の度に単位上限やスケジュールなどの調整が必要、④最初の1週間に授業を受けてから最終的にどうするか決めることが可能であるものの、第1回の授業から超大量の宿題が課され、「あんなに頑張ったし(第1希望ではないけど)こっちの授業にしちゃおうかな」、とダメな投資家心理が発揮される。

 

特に②の4段階の手続きは意味不明で、前の段階とどう違うのかもよくわからないまま手続きが進んで行く。そして、①のとおり、特に最初の方は希望どおりに履修登録ができないため、ステップごとに「今回こそ私に太陽が微笑んでくれるかしら」とハラハラドキドキさせられる(なお、ボストンは既に寒く太陽が恋しい)。というか、恋愛だったらこんな相手はお断り!というくらい振り回される。小悪魔よりひどい大悪魔。笑。

 

さらに複雑なのは他学部聴講(cross registration)で、私はもともと法律以外のことがやりたかったので(なぜロースクールにしたのか不明)、ビジネススクールやケネディスクールでの履修をとても楽しみにしていたのだが、ロースクールの承認、他学部の承認、教授の承認、とにかく何でもかんでも承認が必要で、また同じハーバードといってもシステムが異なり、それぞれで色々と手続きせねばならず、かなり大変だった。何度も心が折れ、さらにNY Barを受験するための要件や単位数上限という超えられない壁にぶち当たったものの、とりあえず今学期はビジネススクールで1つ授業を取ることにした。

 

そして、このビジネススクールでの授業が今学期で一番面白い。例えば、引越し業者がクレームの数を減らすにはどうしたらいいか、というケーススタディでは、「クレームの内容を分析して対応する」というような当然想定される回答ではなく、顧客が感じているpain point、特にemotionalな部分に着目して考えるように指導される。

 

例えば、引越し業者が5分遅刻してきたことに顧客が怒っていたとすると、怒りの原因は5分遅れたことではないことが多い。また、会社としても、道路状況等により5分程度の遅刻を完全になくすことは難しい。それでは、どうしたらいいか。

 

ここで顧客の気持ちを考えてみると、引越しというのは準備も大変で、特に新しい場所に住居を移すということは、様々な面でストレスがたまりやすい。もともとイライラしているから、ちょっとしたミスも許せず、引越し業者にクレームをする。

 

だとすれば、引越しや新生活に対する不安を取り除けばいいのではないか。そこで、この引越し業者は、筋肉マンではなく、地元の情報に詳しい人や、ユーモアのセンスに溢れている人をスタッフとして雇用し始めたそうだ。

 

ビジネスの文脈で、何よりもまずemotionに着目すること自体も驚きだったが(金至上主義かと思っていた)、思わず授業中に「なるほど」と(日本語で)呟いてしまった。

 

ビジネススクールのケーススタディは、ロースクールのケーススタディ(=判例研究)とは全く異なる。私は今のところ、顔にinnovationと書いたお面を被ってideaを披露しているビジネススクールの学生の意見を、キレイな英語話すなぁ、すごいなぁ、とまったり聴講している。