ワーママのアメリカと日本の子育て

弁護士の子育てサバイバル日記

Mask up or Lockdown

アメリカでのコロナ件数は相変わらず上昇傾向で、でも自宅待機命令が解除されてどんどん皆外に出てきた。「いつも持ち歩いているの」といってアルコールを染み込ませた紙をジップロックに入れて、何かに触る前に必ず消毒する人もいれば、「コロナに最初に感染した人に賞金!」といってパーティーをしている人たちもいる。

 

シカゴの中心部はかなりマスク率は高いが、暑くなってきたのもあるのかマスクを口ではなく顎につけている人が半分くらいになってきた。気持ちはわからんでもない、、、シカゴの冬はマイナス30度だったのが今はプラス30度。日本のクールタイプのマスク、アメリカでも手に入らないかな、、、日本ってこういうビジネス対応が早くって日本企業の技術力の高さと意志決定の早さに驚く(よく批判されているより日本企業ってすごい気がする)。とにかく、またロックダウンにならないように、みんなマスクしましょう。

 

先日参加したハーバードアルムナイ主催のウェビナーによれば、この3ヶ月でアメリカは3つの危機に直面したという。

 

①公衆衛生危機

コロナで露呈したアメリカの公衆衛生の脆弱さ(やっぱり日本に比べたら街が汚いし、衛生観念も相当低いと思う。そして医療へのアクセスが厳しすぎる。)、そして「公衆」といったときにどれほどグローバルに考えなければならないか、という問題。トランプ大統領はWHOが中国寄りだとして脱退を表明したけれど、そういうことじゃないだろ、、、と顔をしかめずにはいられない。

 

②経済危機

ロックダウンによる経済停滞。私の実感としては、国内のロックダウンだけでなく、グローバルにヒト・モノが自由に動いていたのに、これを国境をシャットダウンすることで止めたことによる影響は、「国」という単位を再意識することにもなり、世界単位で考えなくてはいけないのに国粋主義に走りがちな気もする。

 

③社会的危機

①や②の危機が、社会的に不公平に影を落としている。白人警察による黒人の不公平な取り扱いは昔からあった問題だが、①②の危機により、よりシャープに露呈した。人種差別(racism)が①②に共通した背景になっている。誰の言葉だったか忘れてしまったが、"we have to be visible"と言っていて、今まで見過ごしてきた問題に改めてスポットライトがあたった時期なのだと思う。

 

ただ、今まで見過ごしてきた問題なだけに、そして解決されることなく常に社会の根底にあった長い歴史を持つ問題なだけに、今デモやプロテストしたとしても「結局変わらないのではないか」「何で今回は違うのか」という批判はされるところである。SNSの活用やビデオなどのビジュアルな記録の存在、などが指摘されているが、あるセミナーでは"This will be different because we choose to be different"と活動家が言っていたものの、ここは本当に難しいと思う。

 

今回のBlack Lives Matter運動を受け、ある権威のある辞書は”racism”の定義に制度的抑圧を含めるよう修正したらしい。こうやって、言葉の意味が変わり、人々の意識が少しずつ変わっていくと信じたい。

 

これらの危機は法律事務所にも影響を与えているが、ハーバードの分析によると、全てがオンラインになったほかは目立った傾向はないという。給料カットや人員削減、新規採用の停止なども、ないとは言わないが他の業界に比べれば微々たるものとのこと。弁護士って不景気なら不景気で倒産やリファイナンスなど、仕事はあるからなぁ。。。すごい商売。

 

何か弁護士ってハゲタカみたいで嫌だなと思っていたとき、最近私が毎日チェックしているシカゴ市長のライトフットさんが、所属する事務所のオンラインセミナーに参加するとのことで、私も参加した。ライトフットさんは、シカゴ大学ロースクールの卒業生で、シカゴの大手法律事務所で働いていた弁護士でもある。

 

ライトフットさんの一番の懸念は、世論が二極化していき、どちらのサイドも歩み寄ろうとせず、どんどん極端になっていることだという。でも、そこにこそ弁護士のスキルが生かせる。つまり、弁護士は言葉と論理で(暴力ではなく)相手を説得させる、というスキルを持っているのであり、交渉のプロ。弁護士にこそ二極化した世の中の架け橋になってほしい。

 

おぉーーー。感動した(笑)。メッセージ性溢れる、前向きになれるセミナーだった。政治家だからなのかな。バラク・オバマも、頑張っている若者のストーリーを紹介して「だから未来は明るいと断言できる」と前向きなメッセージを発していたが、ライトフットさんも夢を持たせてくれる人だった。

 

シカゴのロックダウン解除は6月3日からの予定だったが、ジョージ・フロイドさんの死とそれを受けたBlack Lives Matter運動のプロテスト、そこから発展した暴動により、6月1日の時点で、ダウンタウンの通りはゴミとガラスの破片だらけ、レストランやお店は破壊されて盗難にあい、公共交通機関もストップしていた。この状況を受け、ライトフットさんはロックダウン解除を延期すべきかどうか迷い、街を歩いてシカゴの人たちにどう思うか聞いて回ったそうだ。

 

すると、みんなロックダウンは解除すべきだと主張したという。商品が略奪されて売るものもなくなっていても、お店が破壊されて現実には6月3日に再開することは無理だとしても、「従業員も客も待っている」「暴力に影響されてはいけない」「コロナとは別に考えるべき」「シカゴの経済を動かす時がきている」などと、力強かったそうだ。ライトフットさんは、前向きなシカゴの人たちの思いを受けて、自信を持ってロックダウン解除を予定どおり実行することを決断できたという。

 

Don't talk about it but be about it.

 

先に挙げた活動家の言葉だ。BLM運動が再熱してから1ヶ月以上たつが、この間の独立記念日も、花火大会などのイベントは中止された一方で(でもなぜか私のアパートから花火がたくさん見えた。個人で花火をあげているのだろうか(違法だけど)、、、それともちょっと郊外では花火大会を決行したのかもしれない。いずれにしても、地平線が花火で埋め尽くされるのは初めての光景だった。)、大規模なBlack Lives Matterのプロテストが行われた(一部暴動に発展したが、平和的なデモだった。)。ただ批判するだけでも、あるいは議論するだけでは、結局問題を第三者的に見ているだけ。でも私の目の前には、たくさんの人たちがbe part of itを実践してデモに参加していた。もちろんデモに参加するだけが手段ではないが、その人数の多さと団結力に驚き、これが、アメリカのいいところかもしれないと思った。