ワーママのアメリカと日本の子育て

弁護士の子育てサバイバル日記

カマラ・ハリス

アメリカでは有色人種初かつ女性初のカマラ・ハリス副大統領が就任した。彼女のI am the first but not the lastといった感じ(ざっくりというと笑)のスピーチに私は感動したが、初めての人がいるからこそ次世代に続いていくもの。歴史の大きな節目であることは間違いないだろう。

 

日本では相変わらず、政治家だけでなく企業でも、リーダーシップを取るポジションに女性が少ない状況が続いている。こういうとき、アメリカに比べると日本は〜〜的な議論をよく聞くが、私の実感としては、アメリカも相当女性差別がはびこっている。

 

女性が会議に出ると長引いて効率が悪い云々といった発言をする政治家に非難轟々だったが、同じような話を以前アメリカでも聞いた。シカゴ弁護士会の勉強会に参加したときに、group decision makingに女性が参加すると面倒くさいという偏見があると言っていた。女性は感情的。女性には決定力がない。女性は脱線しがち、、、

 

そこで弁護士会のグループが統計をとったところ、女性がいた方がまとまりやすいというデータが集まったという。理由の解析はまだだが、女性が会議にいると平和的な雰囲気が出やすいからではと言っていた。これに対して、じゃぁ全部女性だったら?という質問が出ると、多様性が失われるのでかえってまとまらないという意見や、いやむしろ全部女性の方が聞く耳を持っているのでスムーズに進むのでは、という意見があった。意見だけにとどまっているのは、意思決定機関のメンバーが全部女性だったら、というデータがまだ十分に取れない現状があるからだ。

 

統計自体は色々批判できるところもあるので、これのみを信頼するの危険だが、こうやって数字でアプローチしていくのはアメリカっぽいなと思った。

 

あと、この勉強会はコロナ前だったので、一同が裁判所に集まって開催されたのだが、場所はまさに普段裁判が行われる法廷で、スピーカーはバーの向こう側(裁判官がいる方)に机を並べて座っていた。オーディエンスは一応傍聴席に座っていたのだが、人が溢れるといとも簡単に(傍聴席側から裁判官側に)バーを越えていき、ついには陪審員の席などに座っていた。自由。

 

さらには休憩時間に廊下でクッキーなどが出されたのだが、オーディエンスたちは休憩時間終了間際にクッキーをもう一枚と新しいコカコーラを片手に席に戻り、法廷でモグモグし始めた。法廷の威厳も甘いチョコチップの匂い。これぞアメリカ。

 

結局アメリカの弁護士業界は白人で男性の弁護士がマジョリティなのだが、これがクライアントからのプレッシャーという形で変わりつつある。つまり、クライアントが「チームメンバーを半分マイノリティにしろ」ということをリクエストしてくるのだ。

 

ここでアメリカなのは、マイノリティといったとき人種と性別の二つのファクターがあること。例えば私はアジア人でかつ女性なので、マイノリティポイントがダブルで2ポイントになる。つまり、パートナーから見れば、私一人で二人分のマイノリティをチームに入れたことになる。いいのか悪いのかわからないが、私はある意味モテモテだ笑

 

日本でこれをやろうとすると、性別によるマイノリティポイントに偏りがちになり(日本人以外で日本の弁護士資格を持っている人はほとんどいないように思う)、結構実現は難しいのではないかと思う。日本でも外資並みの要求がなされるようになると、かなりきつそうだ。が、自身の古い成功体験でより頑固になった頭の固いおじさまが多数派の弁護士業界においては、これくらいの圧力がないと、しかもクライアントからの圧力でないと、差別とまでは言わなくても女性が少数派であることは変わらないだろう。

 

他にも、例えば何か作業を委託するときに(翻訳など)、中小企業に委託するとそれでもマイノリティポイントが稼げる。こういう大手に中小企業が食われている、強者vs弱者みたいな視点も何だかアメリカのヒーローものっぽくて面白い。

 

逆にいうと、こういう仕組みがなければ、チームのほとんどが白人男性で、業務委託先もほぼ大手なのだ。少なくとも、アメリカの方が女性差別がない、というわけではなさそうだ。

 

一方で、アメリカの方が、女性がより大きな声で権利を訴えている気がする。

 

個人的にはあまりフェミニズムは好きではないし、完全に共感できるものでもないのだが(日本人的感覚だとうるさいというかしつこいというか、、、もちろんそれだけ何度も強く主張しなきゃいけない状況だからなのだろうけど)、アメリカのマイノリティは集まる。集まってデモをする。集まって訴訟を起こす。とにかく集まって行動するのだ。

 

これが必ずしも功を奏しているわけでもなく、また筋がいいとも限らないのだが、こういう行動の積み重ねが、カマラ・ハリスに繋がっていったような気がする。マイノリティも、集まれば大きな力になる。日本でも、最近はSNSなどでどんどん人が繋がっており、物理的に集まらなくても、全く同じ意見ではなくても、女性たちの繋がりの輪が広がってきているように感じる。案外女性首相が登場する日も近いかも。