ワーママのアメリカと日本の子育て

弁護士の子育てサバイバル日記

アメリカ最新M&A事情

ハーバードロースクールは2学期制だと聞いていたが、実は3学期制で(入学してから知った)、1月にJタームと呼ばれる集中講義が行われる。毎日同じ授業を3週間受け続けるというもので、毎晩宿題に追われるため、塾みたいだ。

 

最近は毎朝雪か霜が降っているので、外に出るという決心をするだけでも一大事。せめて授業は軽めにしようと、土地勘のあるM&A Workshopを履修することにした(一応私はM&A弁護士)。実際、単語も聞き慣れたものが多く、ほっとする笑。

 

M&Aはアメリカではまだ花形の分野で(日本は市場が成熟してしまった感がちょっとある)、講師のM&Aパートナー弁護士も何だかキラキラしている(ちなみにキャリアもキラキラ。YaleとHavardをmagna cum laudeでご卒業)。

 

が、ご多分に漏れずトランプ政権の影響を良くも悪くも受けており、株価上昇の恩恵を受ける一方、税制改革によるスキーム変更だけでなく、Twitterリスクが潜在リスクとしてリストに明記されることもあるようだ。

 

また、最近の傾向として、中国との貿易戦争がある。M&Aの文脈では、例えばトランプ大統領が、CFIUSと呼ばれる投資委員会を通じて、「国家安全」を口実に中国企業によるアメリカへの投資を阻止しようとしている。もはやシンガポールの企業すら中国系とみなし、投資を諦めさせたそうだ。ちなみに中国側も、アメリカ企業の投資を止めるなどの報復的な対応をしている。

 

そして最近の研究で注目されているのは、「感情」が結果を左右する重要なポイントになっているという点。

 

例えば、株価の上下の動きと、M&Aの案件数・取引額の動きがほぼ同じというデータ。理論的には必ずしも相関関係にあるとはいえないが(株価が低いからこそM&A取引で企業価値を高める、というのももちろんある)、株価が上昇傾向にあるときは、経営者も強気でM&Aもバンバンやる、逆から言えば株価が下がっているときはM&A取引が失敗だったと批判されるリスクを過大に見積もってしまい消極的になる、という説明が可能だ。

 

他にも、心理的なバイアスにより、少なくとも半分のM&A取引において、買収者は適正な価格以上の対価を支払って対象会社を買っているというデータもある。

 

例えば、入札方式で買収会社を選定する場合、入札で勝ち残った勝者は、客観的に対象会社(=自分が勝ち取ったもの)の企業価値を評価できず、過大評価する傾向にある。これは、winner's curseと呼ばれる心理学では有名な現象で、勝利したからこそそこに罠があるという、日常生活でもちょっと役に立ちそうな教訓だ(すぐ調子乗っちゃうので)。

 

確かに自分の実務経験を振り返っても、最後は人が判断するので、「感情」が大事、というのはしっくりくる。ビジネススクールの授業では顧客の「感情」に着目したが、ロースクールのこの授業では、弁護士の顧客である経営者の「感情」に着目している、というのも面白い。

 

週末はどっと疲れてしまい、寝ているのか起きているのか、それともどちらでもないのかよくわからない中途半端な状態でゴロゴロしてしまった。この寒さで外に出る気にはなれず、winner's curseというかwinter's curse。我が家の怪獣さんは、容赦なく私のみぞおちの上に乗ってきて、さらにジャンプし始めたのだが、「せまいなぁ」と言って私から降り、ベッドの上で跳ね始めた。助かった。笑