ワーママのアメリカと日本の子育て

弁護士の子育てサバイバル日記

NY Barという苦行

ロースクールを卒業したのに卒業した気がしなかったのは、卒業後に控えている司法試験のせいだった。私は外国人でも受験できるNY barを受験したのだが、ただただ、ひたすら苦行だった。

 

よく考えたらもう若くないし、無理して徹夜して勉強すると普通に翌日に響いて使い物にならない。英語という大きな壁と、法律用語でよく出てくるラテン語の嵐で、5分前に辞書で調べた単語を気付いたらまた調べている、といったことばかり繰り返し、一向に進まない。何なら10分後には、調べた単語に見覚えすらなくなっている(笑)。科目も不必要に16科目もあり、ロースクールで履修した科目は2科目だけだったので、本当に卒業後の2ヶ月で勉強が終わるのかと、不安を抱えながらの受験勉強だった。

 

試験は3時間×2(午前と午後)×2日間。はじめは3時間同じ椅子に座っているだけでもしんどかった。特に6月は、司法試験を受けないという勇気ある選択をした強者たちが卒業旅行で遊びほうけるので、私も何となくまだいいかなと思い、予定していた以上に楽しんでしまった。それに4才の息子にとってみれば司法試験も何も関係ないので、息子に求められるがまま楽しく遊んでしまい、私も満足してしまっていた。

 

ついに慌て始めたのが7月。7月の第一週は独立記念日のお祭り騒ぎでいっぱいになるのだが、子持ちの受験生にとっては、保育園が一週間休みになるという、大変問題のある一週間だった。別に外で花火があがろうが、大物が来るコンサートがあろうが、それは構わない。我慢できる。でもお願いだから、保育園を開けてください、、、というわけでまともに勉強できず危機感が増し、ついに集中して勉強を始めた。

 

が、つまらない。笑

 

こんなに試験勉強がつまらないなんて思わなかった。日本の司法試験の方が考えさせられることが多く、大変だし難しいけど、やりがいがあった。他方、NY barは9割暗記で、覚えているか覚えていないかだけ。残りの1割は英語力の問題で、覚えていなくてもネイティブだったらさぞかし簡単に解けただろうと思う部分が相当部分を占めていた。

 

というわけで、3時間トイレに行かないでも大丈夫なように座り続ける練習をしたり、お昼食べなくてもお腹空かなくなるようにランチの量を調整したり、本質からは離れているような、でも意外に試験の本質をついているようなトレーニングをして笑、本番を迎えた。

 

試験会場はいくつか選べるのだが、多くのハーバード生にならい、私はAlbanyで受験した。最大のメリットはバスで安く行けることで、天気に左右され欠航も多い上別に安くない飛行機を使わなくていいのは、とてもありがたかった。どうやら過去には、飛行機が2日遅れて受験できなかった人もいるらしい。

 

とはいえ、バスも4時間かかるので、楽な旅ではなかった。まず、規格がアメリカ仕様なので、私の短い足はフットレストに届かない。wifi完備のはずなのに、何も通じていない。禁煙なのに誰かがバスのトイレでタバコを吸い、それが空調を通じてバス内に蔓延する。ずっとスペイン語で4時間電話し続けたおばちゃん(相手も4時間付き合ったのはすごい)。「疲れた」といって、本来停留所ではないところで2回も休憩した運転手さん(安全の方が大事なので誰も文句は言わない)。もちろん、定刻どおりには出発も到着もしない。

 

ようやくバスを降りて、city busに乗り換えようと思ったら、雨がザーザー降り始めた。何とか停留所を見つけて、確認のために待っている人にあっているか聞いたら、停留所はあっていたのだが、料金は現金でしか支払えずカードは使えないという。

 

しまった、全く現金を持っていない。アメリカのカード社会に慣れすぎてしまっていた。てかここもアメリカか。なんでカード使えないの!

 

そこに現れた救世主。同じくボストンから来て、これからNY barを受験するという中国人の学生が、現金を貸してくれた。オンラインで彼女に支払いをし、何とかcity busにも乗れた。彼女はとてもフレンドリーで、聞くとBoston Universityの学生だということで、道中も楽しく過ごせた。しかも雨も上がり、お日様が出てきた。まさに神!

 

この時期のAlbanyのホテルは、NY barがあることをよくわかっているので、値段が2-3倍になる。あまりに高いのと、なのに朝食すらついていないので、私はlocalの小さいホテル(朝食付き!)に滞在することにした。

 

歴史のある、といえばいいのだろうか。とにかく、レンガの歩道はスーツケースに被害をもたらし、どの建物も数段階段があって、それを登らないと入れない。ドアはめちゃめちゃ重くて片手では開けられず、全身を使って体重をかけて開ける。ドアノブも何回もカチャカチャ回す。

 

ホテルなんかは鍵が意味不明にたくさんあって(私の部屋は3つもあった)、しかも右回りに回すと鍵が閉まるという日本と逆の構造になっており、ただ部屋に入りたいだけなのに、ものすごく時間がかかった。

 

シャワーをひねっても水はチョロチョロとしか出ず、温度も熱すぎるか冷たすぎるかの二択を突きつけてくる。ようやく落ち着いたと思って夕飯に出掛けると、ビジネス街なのか昼しかやっておらず、夕飯の時間は空いてない。

 

Subwayならと思い、調べて行ってみたら病院の中で、入院患者用のお店だった。私の疲れきった顔は入院患者みたいだったかもしれないが、ここで変な菌をもらってしまったら困るので、テイクアウトにし、一応手を消毒してから病院を出た。

 

そんなこんなで、息子とテレビ電話をした後、ようやく試験日を迎えることになった。