ワーママのアメリカと日本の子育て

弁護士の子育てサバイバル日記

コロナとこのままどこに向かうの?

あれよあれよとコロナ患者数が増えてきて、またロックダウンになるのではという雰囲気が出てきた。マスクの装着率からみても、アジアほどには高まっておらず、まぁそうだろうなという気もする。イギリス低すぎ、、、



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コロナの後どうやって経済や社会を立て直していくかという「after コロナ」の議論ではなく、コロナとどう付き合い、向き合いながら経済を保っていくかという「with コロナ」の議論に重心も移ってきた印象だ。

 

またまたハーバードのウェビナーに参加してみたところ、またまた3段階に状況を分けて説明していた。

 

①第1段階

(1)政府の権限の限界、(2)情報の正確性、(3)労働者の保護などの法整備、が問題になるという。

 

(1)政府の権限の限界

コロナ感染者数増加を防ぐために、政府がどこまで何をできるかということ。特にアメリカは連邦制をとっており、連邦政府の権限は最小限に抑えられているので、できることが限られている。。。という説明だったが、実感としては、その分州政府の力が強く、これといった議論もないまま強硬手段=ロックダウンが決定された、という印象だった。経済政策や福祉支援は後回し。当初は「とにかくやばいから明日からロックダウンします!大変だと思うけど、対策はあとから考えるからさ。」という感じだった。急すぎてもう「えーーー!!」というリアクションしかするしかなかったが(事務所に書類置きっぱなしだったし、いきなり保育園閉められてもどうやって家から仕事すればいいんだって感じだし、スーパーにはそりゃ駆け込むけど行ったら既に品切れで明日からなに食べればいいんだって感じ)、今から振り返ると、君たちをほったらかしにはしないよ、という約束は一定程度果たされて、最近は色々な支援策が発表され始めた。日本はどちらかというとロックダウンに慎重で、当時はそれが私には政府の権限行使が抑制的に見えて、好印象だった(批判されていたみたいだけど)。

 

そして権限が小さいはずの連邦政府は、外交関係においては多大な権限を有している(というか連邦政府が独占している)ので、やりたい放題。「アメリカの雇用を守る」とビザの発給を止め(私のビザも更新できなくなった)、(ウィルス持ち込む可能性のある)留学生はアメリカに来るなと言わんばかりの方針を打ち出した。いやいや、世界一コロナ感染者数多い国はアメリカだから。それはアメリカ自体に理由があるからだから。

 

既にアメリカに留学している留学生でも、留学先がオンライン授業のみの場合は、帰国するか対面授業を提供する学校に転校しろというのもひどすぎる。コロナ対策ならば、移動することを強いるのは変だし、学校には対面授業を促進させる可能性もあり、オンライン化とは逆方向だ。これにはオンライン授業に完全移行することを発表していたハーバードとMITが反対して訴訟になり、他の大学も猛烈に批判して、ついに撤回された。でも、全世界の学生に、「アメリカは留学先として最悪」という印象を与えてしまったことのダメージはかなり大きいだろう。。。

 

(2)情報の正確性

コロナを利用して不安を煽る広告やフェイクニュースなど、情報の正確性が問題になった。この点、ニューヨーク州のクオモさんなんかは評価されていて、毎日データを提供し続けている(マッキンゼーがコンサルタントとしてアドバイスしているらしい。こういう形のビジネスと政府の共同は、日本ももっと見習うべき!)。シカゴも、私の大好きなライトフット市長や、超金持ちのイリノイ州のプリツカー知事(金持ちの別荘が立ち並ぶレイクジェニーバという場所があるのだが、この州知事、ロックダウン直前あたりのときに湖でスピードボートを飛ばし、スピード違反で捕まったらしい(笑)。同地に別荘を持つやはりお金持ちの知人に案内してもらって州知事の別荘を外から眺めたが、いやもう半端ない超金持ち別荘だった。)が、連日記者会見や専門家との対談を行っている。正確な情報を、透明性をもって伝える。これこそ政府の役割、といった感じ。

 

他方日本は、政府が持っている情報を、国民の方から情報公開請求などで求めていく、という姿勢が強いような気がする。友人がやっていたセミナーでは、「情報はもらうものではなく権利」と言っていたが、政府が持っている情報はそもそも国民のもの、だからシェアしなきゃいけない、という姿勢にもっとなればいいと思う。政府が情報を選択的に小出しにしていれば、それは管理社会だ。福島の原発事故のときだって、もっと透明性があれば防げた混乱があったように思う。もちろん情報公開請求が制度としてあるのは大事だが(国民からのチェック機能もあるし)、そうではなくて、正しい情報を積極的に国民と共有する、という考え方に変えていくべきだと思う。

 

(3)労働者の保護などの法整備

例としてあげられていたのが2つ。1つ目は、医者が、病院の医者に対するコロナ予防策が不十分だと反対して勤務拒否した場合、病院がその医者を解雇したら、それは不当解雇か。コロナは医学的にまだ確定しておらず、対策といっても何が完全かはわからない。病院としてもできることに限界がある。他方で医者も人間である。。。2つ目は、コロナの疑いがある従業員の勤務を会社が拒否した場合。会社としては、コロナの感染を防ぐ必要がある。だが従業員はコロナにかかっていないと言い、給料をもらうために勤務したい。コロナと判明していれば勤務拒否できるが、疑いにとどまるときはどうか、、、これはコロナの疑いがある=「障害者」として、障害者差別にあたるのか。。。

 

アメリカは基本的に解雇は自由なのだが、差別による解雇は許されない。不当解雇かどうかで社会的にも経済的にもかなり大きな違いが出るが、このあたりの法整備はまだまだ時間がかかるだろうから、個別に争っていくしかない。

 

②第2段階【←今ここ】

(1)患者の優先順位、(2)個人情報保護、が問題になるという。

 

(1)患者の優先順位

コロナ感染患者を優先して、他の患者を後回しにしているというのが現状。小さなことだが(私の睡眠という意味では超重要だけど)、夫の鼾外来もキャンセルされた。パンデミック真っ盛りの今ならばいいが、このまま長期間続くと、非急患であっても放置しておくと防げた病気も防げなくなってしまう。

 

そしてコロナ感染患者内での優先順位も問題で、高齢者と若者どちらを優先するかという悲しい問題に直面する。

 

(2)個人情報保護

コロナについて政府から正しいデータを提供してもらうには、一定の個人情報を政府に国民から提供する必要がある。日本でも政府提供の接触アプリが始まったが、個人情報保護や管理社会の危険性を、全て「本人の同意」で情報を取得したということで問題解決としてよいのか。政府による個人情報の使い方を、誰がチェックするのか。

 

③第3段階

(1)免疫を獲得した人とそうでない人の区別、(2)ワクチンの検証方法、が問題になるという。

 

(1)免疫を獲得した人とそうでない人の区別

もっと時間がたつと、免疫を獲得した元コロナ患者という人たちが一定層出てくる。彼らはコロナ感染リスクが低いため、外出を禁止する必要性は小さく、むしろ経済を動かすためには出てきてほしい、という考え方も出てくる。immunity passportやcertificateを発行して、免疫があることを証明すれば、自由に移動していい。

 

すると、免疫のある人とない人で格差が生まれる。免疫のある人だけが外に出て働くことができ、給料があがる。企業は免疫のある人を積極的に採用するようになる。学校でも、免疫がある人だけが対面授業を受けられる。そうすると、コロナで重患になるリスクをおかしても免疫を獲得しようとする人が出てくる。

 

(2)ワクチンの検証方法

ワクチンの開発が進み、いよいよ臨床実験という段階になったとき、誰を対象者とするのか。若い人を優先するのか、あるいは逆に死亡の可能性が高い人で実験するのか。何も効かないのであれば、何でも試してみたいという患者もいるだろうが、例えばお金持ちがお金でワクチンを買うというのが許されるのか。患者の優先順位と似ているが、また違った視点も加わる。

 

コロナは本当に色々な問題を投げかける。早くafterコロナの時代が来てほしいが、これらの問題には答えていきたい。