ワーママのアメリカと日本の子育て

弁護士の子育てサバイバル日記

Black Lives Matter

コロナによる自宅滞在命令が解除されたと思ったら、今度は夜間外出禁止令が発令された。理由は、ジョージ・フロイドさんが白人警察に殺されてしまったことへの抗議デモが暴動化したためだ。ミネアポリスに近いシカゴは、全米の中でも特に暴動が激しかった。コロナのときは「ウィルスって目に見えないから怖い」と言っていたが、今回の暴動は「目に見えるから怖い」という感じで、物理的に恐怖を感じた。すごい時期に、アメリカにいることになってしまった。歴史がここで変わるだろうか。

 

黒人差別の歴史はアメリカ建国と同時に始まっていて、とても長く根深い。アメリカの発展と奴隷制度は切り離せないし、奴隷解放宣言が出されると労働力が不足し、黒人を理由なく逮捕して囚人にしてその不足を補った。経済が衰退すると誰かのせいにしたくなる。それを奴隷解放と重ね合わせることで政治的に利用され、黒人への差別がさらに固定化され制度化されていく。文化的にも、「昔はよかったな」的な映画では決まって主人公は白人で、黒人を動物のように描く。名作といわれる「風と共に去りぬ」なんかも古い固定概念に寄与していると批判されている。そして今でも、死刑囚の9人に1人は無実の罪で死刑執行されており、ほとんどが黒人だ。

 

コロナウィルスの感染も、黒人の感染率は白人より高い。あるデータでは入院率が4倍以上だ。アメリカには無保険の人がたくさんおり、彼らは病院にそもそも行かない(行けない)ので、それを考慮するともっと差が広がると思う。


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同時に気付くのは、黒人と同じくらい入院率が高い、ネイティブアメリカン。医療における黒人についての格差は、コロナウィルスをきっかけに結構言われていたが、ネイティブアメリカンについて触れられているのは少なかった印象だ。ネイティブアメリカンは人数が少ないからかもしれないが、non-whiteの中での格差も広がっている気がする。

 

こちらのデータではラテン系が最も多い。


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私がアメリカの憲法判例を勉強して理解した範囲では、アメリカには白人優越主義(white supremacy)があって、その下に元奴隷の黒人がいるというカーストがある。アジア人やヒスパニックは、このカーストにも入っていない、「カースト外」というカテゴリーだ。ネイティブアメリカンは、触れられることすらない忘れられた存在だ。Black Lives Matterの運動に何となく違和感を感じるのは、黒人だけにフォーカスしているからなのだろうか。私は、アジア人として自分をこんなに意識することは今までなかった。

 

今回のジョージ・フロイドさんの事件で、傍観していた警官のひとりにアジア系アメリカ人がいた。コロナウィルスがアジアから始まったとしてアジア系への暴力や差別が横行していたが、今回の件でもアジアへの蔑視がさらに強まった。シカゴの暴動でも、セブンイレブンや寿司やさん、UNIQLOがターゲットにされていた。悲しい話だが、黒人の中にはアジア人を差別している人がおり、白人にやられたことをそのままアジア人にやり返している人たちがいる(そうでない人もたくさんいる)。

 

もっとも今回の暴動は、おそらくプロによるもので、人種問わず多くの人たちが平和的なプロテストを行っていた。暴動化したのは、トランプ大統領が政治的に利用するためとも言われていて、選挙の票を握る白人女性が、「黒人って怖いわ」とトランプに票を入れることを狙っているらしい。真実のほどはよくわからないが、ROLEXなどの高級ブティックが狙われているのは、暴動にかこつけたプロの窃盗集団な気がする。

 

トランプ大統領は、民主党の市長などを名指しして、対応が悪いと批判した。それに対抗したシカゴ市長のスピーチがかっこよかった。「私はあなたに二つの単語しか言うことがない、Fから始まってUで終わる。」

 

シカゴは確かに強力な対応策をとっており、正直コロナウィルスのときより厳しかった。まず物理的に人がダウンタウンに集まれないようにした。シカゴのダウンタウンは、シカゴ川が北に流れているのだが、そこにかかっている橋を全て封鎖した。高速道路の出口も全て封鎖、バスは中止、電車はダウンタウン内は停車せず郊外のみをつなぐ。ダウンタウン内への移動は住人と勤務証明書を持ったessential workersだけ。とはいえ、物理的に橋がかかっていないので、対岸に行けないから無理。コロナの時は散歩が許されていたが、この状況だと家にいるしかない。事務所の同僚は、暴動があった日はビルから出られず、食べるものもなくその日は事務所に宿泊したそうだ。

 

気付いたら街にはmilitary policeと書かれた戦車のようなものが走っており、珍しく普通のバスが走ってるなと思ったら大量の警察官が乗っていて、我が家の近くで停車して降りていった。こんな大事なんだ、とあらためて実感すると共に、これだけ守られていれば普段より安全かもしれないと思うくらいだった。

 

Every live matters.歴史がここで変わりますように。