ワーママのアメリカと日本の子育て

弁護士の子育てサバイバル日記

Volcano law firm

ロースクールで履修している授業に、legal professionという授業がある。一言でいえば弁護士倫理の授業で、個人的に興味がある分野では全くなかったが(私はみんながモラル意識が高いと認める日本人だし!なお、東日本大震災のとき、非常事態なのに赤信号できちんと止まっている歩行者の映像はアメリカでも有名。誰も見てなくてもルールを遵守できるのは、宗教がないのにすごいこと)、来年NY Bar Examを受けるための必須科目だから、という理由のみで履修した。

 

が、意外なことに、とても面白かった。教授は学生のことをとてもよく考えてくれており、ケースブックの内容を超えて、実務に出た後に直面するであろう様々な問題のヒントをくれた。そして、既に実務経験のある私には(一応日本で1年の育休挟みつつも5年くらい弁護士をやっていた)、教授の考察は笑ってしまうくらいすっと中に入ってきた(実際声に出して笑ってしまうこともしばしば)。

 

大規模事務所は、かつてピラミッドだった。兵隊として働くアソシエイト弁護士と、その上に君臨するパートナー弁護士。パートナー弁護士になるためには競争に勝ち続けなければならず、アソシエイト弁護士の夢は、そんな勝ち組のパートナー弁護士になること。

 

ところが最近は、work life balanceやpublic interestsの仕事が流行ってきて価値観が多様化し、弁護士事務所は火山のようになっている(教授は私の顔を見ながらMt. Fujiと言った笑)。若いアソシエイト弁護士は歯車の一つとして24時間働くことに我慢できなくなり、マグマのようにフツフツとしている。そして、ちょっとしたきっかけで大規模事務所を辞めていく。パートナーに登りつめた弁護士も、内外の様々なプレッシャーがかかり、下からの追い上げに負け、事務所を辞めざるを得なくなる。パートナーになることは、もう夢でも何でもない。

 

・・・まさにそのとおり!笑 日本でも、アソシエイト弁護士(=私)は馬車馬だの濡れ雑巾だの言われていた。一方で、最近事務所の雰囲気が変わり始めているのも実感していた。子育てへの職場の理解については、正直個人的に結構戦った部分もあるが(笑)、子育てと仕事を両立できる環境は、女性だけでなく男性にとってもいい職場ということで、事務所全体で改革の匂いが漂い始めていた(まだ匂い程度だけれど)。

 

そして、教授が呼んでくれたゲストスピーカーもみんな素晴らしく、さすがハーバード!という豪華さだった。

 

特に印象的だったのは、軍隊の弁護士の話。イラク戦争中電話がかかってきて、「ターゲットの中に一般市民がいる可能性があるが、今の状況から銃撃していいか」などといった質問に答えるそうだ。現代の戦争は正当化が必要で、そこに弁護士の大きな役割があるとのこと。実際、ほとんどの国の軍隊に弁護士がいるそうだ。

 

弁護士はクライアントの利益のために働く、という使い古された条文に慣れてしまっていた私は、軍隊の弁護士にとってのクライアントは誰何だろう、何で選挙で選ばれたわけでもない弁護士にこんな権限があるのだろう、と悶々考えていた。

 

弁護士の仕事は、スピードスケートというよりフィギュアスケートで、その質を判定する基準はあるようでなく、主観的。素人からみれば同じに見えることもある。その中で、自分はどんな弁護士になりたいのか、自分自身の軸を持つ必要がある。

 

ミシェル・オバマは(ハーバードロースクールの卒業生!)、弁護士のスキルを、シカゴのヘルスケア改革に生かした。伝統的な「法律家の仕事」にこだわる必要はない。

 

日本に帰ったら、私はどういう弁護士になるのだろう。。。夫を政治家にして、ファーストレディになろうかな(笑)