ワーママのアメリカと日本の子育て

弁護士の子育てサバイバル日記

LegalTech

最近は○○×Techというのが流行りで、法律の世界ではLegal x Tech ということでLegalTechがブームになっている。AIがドキュメントレビューをしたり、契約条件入れ込めば簡単な契約を作ってくれる、というのが典型例。

 

大手法律事務所は、業務効率化という観点から導入を進めていることが多い。文字通り機械的な(=つまらない)ドキュメントレビューをAIがやってくれるなら、しかも成果物としてきれいな表まで作ってくれるなら、私としては機械に取って代わられても全く異存はないところ。もっと面白い仕事したい!

 

他方Tech系の会社は、大手事務所の弁護士費用を払えないような、かといってプロボノや公的支援の対象にはならない中小企業、中産階級の人たちを対象として、マーケティングしている、という印象だ。つまり、本当はリーガルサービスが必要なのに、費用の面であきらめざるを得なかった人たちに、もっと身近で手軽な存在として、アドバイスを提供することを目的としている。なんてったって世の中中産階級が多数派なので、マーケットとしては、大手事務所が対象としているような富裕層よりも断然大きく、生活保護の対象となるような公的サービスを公的資金に頼ってやるよりも利益率は高くなる。

 

ただ、中産階級的には、今まで我慢してお財布を締めていたところなので、安かったとしても、我慢するより少し費用を払ってサービスを利用する方が得である、ということを明確に示す必要がある。なので、ほとんどの会社は、初回は無料という方針をとっているように思われる。

 

今はまさに過渡期で、技術大国日本はもちろん、企業法務最先端のアメリカでの動きも渦中で目撃できるのは面白い。技術的には、英語版はかなりいいところまでいっていて、私が働いている事務所でも、「これ便利ーー!」という機能があったりする。他方日本語版は、日本語という言語的な難しさに加えて、市場が狭くてプレーヤーが少ないということもあり、まだまだのようだ。が、私の同僚や友人は、新しい試みをいろんな観点から試していて、「稟議通して確信得てから試す」というよりは「だめでもいいからとりあえず試す。失敗したらそこからまやってみる」的な感じで、一緒に話しているとこちらもワクワクする。

 

ハーバードロースクールでも、私がいた年に初めて FinTech(Finance x Tech)のシンポジウムが開かれ、仲のよかったスペイン人の学生がリーダーとして頑張っていた。彼は、AIが取締役・取締役会のあり方を変えると主張していて、確か卒論もそんなようなことを書いていた。

 

FinTechといえば仮想通貨だが、あるパネリストは、まだ仮想通貨はトレーニング中だと言っていた。仮想通貨は、各国の中央銀行の管理下にないというのが特徴なのだが、信頼性などは資本主義らしく競争の中で勝ち取っていくもの、ということらしい。もっとも、ある一定の地位を得た仮想通貨については、市場での信頼では足りず説明責任(accountability)というのが発生するということらしい。ここまでに至った仮想通貨はまだないそうだ。あと、アルゴリズムのIPの保有者は誰か、どうやって保護するのか、という問題もあるらしい。

 

監督機関がないのに誰が説明責任やIPを監督するのかとか、道徳責任(morality)以上の責任が発生する法的根拠は何で、責任主体は誰なのか、などと色々疑問に思った。が、仮想通貨はもともとネットワークに参加している人たちだけが使える閉鎖的なコミュニティーで流通していて、相互監視している、というのが建て前なので、私の疑問も結局定義規定に戻ってしまってよくわからないままだった。

 

マネーロンダリングの観点から仮想通貨は敵視されがちだが、おもしろかったのは、「仮想通貨より信頼できない国の通貨」というのが出てきたこと。例えば、ベネズエラの政府は汚職だらけなので、草の根で支援したいときに普通にベネズエラの通貨やアメリカドルを使うと、途中で色んな人にさっ引かれて届けたい人に届かない。そこで、仮想通貨を使うそうだ。「仮想通貨なら、ベネズエラの通貨よりも価値が安定している」というのは、ビットコインの上下幅に驚いている私には新鮮だった。

 

なんだかんだいってテクノロジーに弱い私は、技術の進歩にただただ驚くばかりだが、韓国人の友人が話していたテクノロジーの限界の観点がおもしろかった。彼がいうには、今の議論はやたらデータばかりにこだわっていて(ビックデータとか、個人情報とか)、見えないものに捕らわれすぎている。もっとphisicalにテクノロジーを考えていけないか。

データは無限だが、phisicalには限界がある。そこを技術で人間の限界を超えていけないか。

 

そういえば、東京パラリンピックの特集で、いずれオリンピックよりパラリンピックの方がおもしろくなる時代が来ると言っていた。現状では、たとえば義足について、個々の技術はほぼ完成に近いそうで、脳から義足に指令は出せる(=考えただけで義足動かせる!すごい!!)らしい。が、課題は、義足で感じたことを脳に送ること。確かに冷たい、痛い、痒いなどと感じられれば、道に落ちている石などにも気付けて、より安全になりそうだ。

 

とりあえず今欲しいのはドラえもんのこんにゃく。日本語で考えたことがすらすら口から英語になって出てきたら最高なのになぁ!笑