ワーママのアメリカと日本の子育て

弁護士の子育てサバイバル日記

Indiana Dunes

子どもの中でも流行り廃りというのはあるもので、我が家のかわいいかわいい息子は、謎の言葉の組み合わせを思いついて一人でゲラゲラ笑っていることが多い。

 

ついこの前まで「まるーになったよぉーーー」と歌うように連呼しており(なお、意味は不明。形としての円を言っているわけではなさそう)、よくわからないなりに私も夫も笑って真似していたところ、もう今は全く言わなくなった(が、夫は癖になってしまいまだ言い続けている笑)。最近は「しゃんぷぅ!」と発声するのにはまっていて、多分“シャンプー”の語感が気に入ったのだと思うのだが、「Shampoo can mean anything! It can be Yes or even No!!」と言って、何を言っても「しゃんぷぅ!」と答える。それから、急に「flamingo!!」と叫んでフラミンゴポーズ(グリコみたいな。両手上げて片足で立つやつ)をとる。きっとこれもそのうち全くやらなくなるんだろうな。

 

そして最近の傾向は、「○○に行こうか」と誘うと、必ず「行きたくない」「家にいたい」などと渋ることだ。これが本当なのか嘘なのか、なかなか見分けがつかない。本当だったら前に何かあったのかもしれないし、でも行ったら行ったでめちゃくちゃ笑顔で楽しんでたりする。

 

そして、今日も「行きたくない」とムスッと怒っている息子。行き先はIndiana Dunes。シカゴから車で1時間弱で行ける、ハイキングコース&ビーチがあって山も海も楽しめる、我が家お気に入りのだだっ広い国立公園だ。ふくれっ面の息子を、何とかお菓子で釣りながら説得して車に乗せる。「楽しいよ!ビーチあるよー!砂丘あるよーー!」、、、ハイテンションで話し掛け続ける私。何でここまでして連れていかなきゃいけないんだっけ(笑)

 

この国立公園は、トレッキングのコースがたくさんあるが、特徴的なのは道の土。砂丘の砂なのだ。海辺を歩いているような感覚なのに、森の中。不思議。そして歩きにくいので結構疲れるのだが、極めつけは坂道。ヒップアップ効果を期待して(笑)、one, two, one, twoと言いながら息子と手をつないで崩れかける砂丘を一生懸命登っていると、嬉しそうに「トレーニングにぴったりだ」と笑顔の夫。本気ダッシュで駆け上る。はやっ!陸上選手のトレーニングに、こういう砂浜で走ったり坂道を駆け上ったりするのがあるそうで、砂丘というのは、それらを掛け算した(砂浜×坂道)、まさに理想のトレーニング場所らしい。

 

同じ国立公園内とは思えないほど、どのトレイルも表情が違うが、衝撃だったのは、馬も通行できるトレイル。多分コロナがなかったら、私たちも乗馬なんかもできたと思われる場所。今は何にもない、、、というわけでもなく、個人で馬を持っている人が(そんな人いるんだというカルチャーショック!)、自家用車に馬用の荷台をくくりつけて、お散歩に現れる場所になっている。

 

ここに行った理由は馬ではなく、馬を驚かせないため、他の動物・ペットが一切禁止されていたからだった。何を隠そう、私は犬が怖い。特にアメリカ人が飼っている犬はでかすぎる。そして、綱をつけていない人も結構多い。許し難いのは、この世の中に生きとし生けるもの、みな犬が大好きだと信じている人がいらっしゃることで、犬が吠えながら私に近付いてきて、私がびびって逃げたりしているのを、「he is a good guy」とわけのわからないことを言ってニコニコ見ているのだ。早く首輪に綱つけてください、、、

 

というわけでトレイルにも、犬を連れて歩いている人たちがたくさんいる。だから私はこの馬のトレイルに期待していた。そう、犬を含めたペットが禁止されているのだ。犬がいない。いや正確には、犬はいない、けど馬はいる。

 

そうなのだ、馬はいるのだ。馬は特に怖いと思った経験はないのだが、我が家の真ん前にあるグラントパークでの警備は馬に乗った警官が行っており、この時に衝撃だったことをすっかり忘れていた。

 

犬の糞は飼主が片付けるのがマナーだが、馬の糞はそのまま放置されるのだ。

 

結果、このトレイルには馬の糞だらけ。糞を踏まないように歩くのにコツがいるくらいだ。出来立てホヤホヤなのか、日光を反射してテカテカしているのもある、、、

 

そこに集まるたくさんの虫。

 

臭いはそこまでではなかったが、とにかく虫がすごくて、ちょっとでも口開けたら食べちゃいそうな感じだった。せっかく来たから景色を見たいという思いと、さっさと帰りたいという思いを戦わせ、とりあえず早歩きするという作戦に出た私。夫や息子はあまり気にしていなかったのは、さすがとしかいいようがない。

 

結局Indiana Dunesには3回行ったが、お昼はいつもビーチでお弁当を食べていた。ビーチといっても、海ではなくミシガン湖沿い。でもミシガン湖、大きすぎて海みたい。ビーチというに値するくらい、ここは砂浜。が、水は海水じゃないので塩水ではなく、遊んだ後もベタベタせず楽だし、波も穏やか。川遊びでよくする、石を川面に投げて、ぴょんぴょんと跳ねて飛ばすゲーム(?)もできる。何なら、それにぴったりな薄っぺらい石がたくさん砂浜に転がっている。かなりオススメ!

 

子どもって天才だなーーと思うのは、こういう時に、何も遊び道具などがなくても自分で遊びを見つけること。波と追いかけっこしているかと思えば、砂浜に線路を書いたりしている。穴を掘り出したかと思えば、落ちている木の枝が波で揺れているのと何やら戦っている。そういう時、息子はきまってブツブツ何かを言っているが、私には聞こえない。この集中力はものすごいので邪魔しないように、私はひっそりと息子を見守る。あるいは、私は私で砂浜でヨガのポーズをとってみたりしている。が、気持ちいいなぁと風感じていると急に、息子からああしろこうしろと指示を出されたり(えぇ、穴を掘らされました)、「ママ見て!」とキラッキラの笑顔でぐちゃぐちゃの海藻を見せられたりする。

 

Indiana Dunesはさすが国立公園なだけあって、トイレもしっかりしているし、駐車場も整備されていて、とても行きやすい。ちょっとびっくりだったのは、国立公園に隣接した個人の家が立ち並んでいるところに、南軍の国旗が掲げられていたりすること。このご時世、黒人差別を示唆する南軍旗を堂々と掲げるのは、相当の筋金入りなのでないかと思う。あと、ネイティブアメリカンの人たちに対して、植民地支配された時に仕事として許容されていたカジノが、何にもないところにポツンと残っていてまだ経営していたり。なお、州名のインディアナは「インディアンの土地」という意味だが、当時いた部族のほとんどが強制移住させられたそうだ。

 

最近シカゴはまた強盗事件や暴動が発生して治安が悪化し、領事館から来たメールによると、この1週間で銃撃事件が75件、1ヶ月だと360件あったとのこと。もともとシカゴはそんなに治安がよくないと言われているが、この数字は例年よりかなり多くなっているし、治安がいいといわれていた地域でも事件が起きるようになっている。

 

何でシカゴが、と思うが、大都市であることや政治基盤などが関係しているのだろう。同僚は、6月と今月の2回の大きな暴動で、もうお店から盗むものも完全になくなったし、警察も増員されたので、かえって治安がよくなったかもと笑っていたが、もう3度目は起きないことを祈るばかり。

 

アメリカに来る前は、トランプ大統領はいわゆるRusty Beltと呼ばれる、昔栄えていたけど今は錆びている工業地帯で働いている白人労働者の不満を吸い上げて当選した、と理解していた。今まで白人ということでかえってスポットライトを浴びることのなかった貧困層の鬱憤が、爆発したのだと。白人の貧困層、というイメージは、黒人の貧困層、というイメージと比べて、私にとっては新しかった。

 

が、アメリカにきて、それだけでないことを知った。裕福で学歴もある人たちが、結構トランプ支持者なのだ。彼らに言わせれば、「成功すれば自由が得られる」。自分の力で成功した、だから自分は自由なのだ。黒人が自由じゃないのは、競争に負けただけ。これはかなり衝撃だった。トランプ支持者は、トランプの虚言を妄信しているのではなく、理解して支持していたのだ。

 

かといって、彼らが冷たい人かというと、一概にはいえない。結構ボランティア精神のある人たちも多いのだ。政府が自分の成功を税金という形で吸い上げ、富を再分配するなんて許せない。ボランティアをするかどうか、どこに寄付するかは自分が決める。だって自由なのだから。

 

といっても、こういう考え方も古くなっているようだ。例えば、6月に起きたBlack Lives Matterの大きなデモでは、ワシントンDCは黒人率が白人率よりも高いにもかかわらず、デモ参加者は白人率が6割で、若い世代の参加者が多かったそうだ。人種間というより、世代間格差の方が大きいのかもしれない。だとすると、将来、今の世代が政権を担う時代がくれば、根深い差別の解決に大きく前進できるかもしれない。

 

というわけで、ダウンタウンにいるとちょっと危ないので、週末は車を借り、インディアナで自然をいっぱい浴びてくるというのが恒例になってきた。毎回息子は行きたがらないが、それでも無理矢理連れて行く。そして思いっきり遊ぶ。帰りの車でスヤスヤ幸せそうに眠る息子を見て、「ほら、来てよかったでしょ」と言いながら、息子が大人になったときはもっと素敵な社会になっているといいなと思いを馳せる。